真・恋姫無双SS 『流れ星』



雲一つない星空の下を一刀は欠伸まじりに歩いていた。
「ん~、やっと仕事が終わった」
朝から愛紗に回された仕事がようやく片付き、気分転換に夜の散歩を楽しんでいた。

「おや、主殿」
不意に呼ばれた一刀はきょろきょろと辺りを見回した。
「こちらです」
声のする方を見やると、高い木の枝に星が腰掛け酒をあおっていた。

「何してんだ?こんな時間に」
「なに、花鳥風月は酒を美味くするのです」
「月見酒か」
星は杯に写る月を眺めて満足そうに口をつけた。

「それと、今宵は面白い物が見れるようなのです」
「何が見れるんだ?」
「後のお楽しみにしておくと良いですぞ」
星はくすくすと笑うと木から飛び降りた。
「さて、後任も来た事だ、私はお暇させてもらうかな?」
「後任?」
星は顎で木の陰を指すと、そのまま行ってしまった。


「なんだ?」
一刀は木の陰を覗いてみた、そこには鈴々が寝息を立てていた。
「・・・もう食べられないのだ~」
お約束の寝言まで聞こえてきた。
「鈴々、風邪ひくぞ」
「あれ・・・、肉まんは~?」
「だから、起きろって」
鈴々はパチっと目を開けて空を仰ぎ見た。

「お星様!」
「へ?」
「お兄ちゃん!お星様は?もう流れちゃった!?」
(星が言っていたお楽しみは流れ星か)
一刀は合点がいった様子で頷いた。
「さっきまで星がいたけど、まだみたいだな。ってかほんとに流れるのか?」
「きょ・・・何とかっていう占い師が今夜来るって言ってたのだ!」
目を輝かせながら鈴々は空を見上げる。
「けど、なんで流れ星なんて見ようと思ったんだ?」
「流れ星はお願いを叶えてくれるのだ!」

(・・・中国にもそんな文化あるのか?)

「鈴々、それは迷信だよ。叶えたいって思いを強く確認する儀式みたいなものだって」
鈴々は頬をぷーっと膨らませて反論した。

「そんな事ないのだ!絶対叶うのだ!」
そんな鈴々が可愛くて、一刀の顔が緩んだ。
「どうしてそう思うの?」
「お兄ちゃんは、皆の夢を叶えてくれたのだ」
「俺?」
うん!と鈴々が力強く頷いた。

「流れ星が落ちた場所にお兄ちゃんがいて、愛紗や皆の夢、平和な世の中を作ってくれたのだ」
「別に、俺のおかげじゃないさ。鈴々や皆が頑張った結果だろ?」
「戦で、もうダメだ!って時もお兄ちゃんがいてくれたから鈴々は頑張れたのだ」
鈴々はこれ以上の反論は許さないと言わんばかりに一刀の目を見つめてくる。

「そうか、ごめんな変な事言って」
「分かればいいのだ!」
鈴々は胸を張って勝ち誇る。
「でも、何をお願いするんだ?」
「秘密なのだ~」
笑顔で空を見つめながら呟く。

「そうか、ちなみに流れ星は流れきる前に3回願い事を言う必要があるぞ」
「そうなのか?」
「あぁ、教えてくれたら一緒にお願いできるんだがな~」
鈴々は慌てた様子ですがり付いてきた。
「教えるのだ!一緒にお願いするのだ~」
簡単に自白まで持っていってしまった。

(単純にも程があるぞ・・・)
一刀はくすりと笑い、鈴々の頭を撫でた。
「えへへ~」
鈴々はくすぐったそうに目を細める。
「で?願い事って?」
「それは・・・」

そう言った瞬間に一面が少し明るくなった。

「わぁ・・・」
「流星群か・・・」
無数の流れ星が夜空を彩っていく。
見惚れているとあっという間に流れ星は消えてしまった。



「あ!願い事」
一刀が鈴々を見やると、まだ放心したかのように立ち尽くしていた。
「お~い、鈴々?」
はっと我に帰ると、鈴々は沈んだ顔になった。
「願い事、なんだったんだ?」
「うん、お兄ちゃんとずっと・・・一緒にいたいなって・・・」
真っ赤になって俯く。

「そんな事か」
「そんな事じゃないのだ!」
一刀は鈴々をそっと抱きしめ、囁いた。
「大丈夫、俺はどこにも行かないよ、ずっと傍にいるから」
「絶対?絶対?」
「絶対だ」
鈴々は嬉涙を拭った。

「やっぱり、流れ星は願いを叶えてくれるのだ」
「そうだな」

2人の頭上で最後の流れ星がゆっくり流れていった。



  • 流れ星は不吉の象徴だろ。 -- 通りすがり (2014-01-02 10:53:02)
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最終更新:2014年01月02日 10:53