真・恋姫†学園 ~始まり 後編~


「ご主人様!!見つけました!!」
「一刀、探したわよ!!」
「一刀、無事だったのね!!」

非常に聞き覚えのある声にこわごわと振り返った
案の定非常に、非常に見覚えのある顔が並んでいた

「あら? 関羽じゃない。どうしてここに?」
「曹操、貴様こそ。 それに孫権こそ」
「あら、私は一刀と一緒に寝ていたら巻き込まれて…」
「い、一緒に寝ていただと!! ご主人様と!? うそを言うな!」
「な、うそじゃないわよ! それに何よいつから一刀のことをご主人様なんて呼ぶようになったの、関羽は?」
「な、ずっと前からそうだったぞ?」


「ちょっとまちなさい、関羽、それに孫権。 状況を整理しないといけないと思わない?」


次第に険悪になっていく空気を断ち切ったのは華琳だった

「この状況を考えると、貴方たちは私の知っている関羽や孫権ではないと思うわ」
「な、どういうことだ?」
「それはどういうこと?」

「私も詳しくは知らないけれど、この世界はひとつではないらしいのよ。
ひとつの大元となる世界があって、そこからいくつも分岐してすべての世界は出来上がってるらしいわ」
「…ご主人様から、もといた世界では私達が男だったと聞いたことがある」
「そういえば私や姉さまが名乗ったときにひどく驚いていたわね。
それは一刀が知ってる孫権や孫策とは違ったからということだったのね」
「ええ、そういうことでしょうね。
となると問題は、あの一刀がどの世界の一刀かということでしょうね」

そういうと、華琳はジロリと睨んできた
その眼は、ほかの女のものになってたら承知しないからねと語りかけてきている、いや脅迫しているようだった
それはあながち間違いでもなさそうであった
もちろん、ほかの二人も同様の視線を送ってきていた


「ねぇ、一刀、貴方は私の世界の一刀よね?」
「な、違いますよね、ご主人様!!」
「一刀、どうなの?」

三人の視線がいっせいに集まり、ひどく居心地が悪くなった
どう答えても三人のうち残り二人からひどい目に合わされるのは想像に難くないからだった



「え~~っと、言いにくいんだけど……全部、かな?」


ぴしぃ!!
三人ののこめかみに青筋がたったのが分かった

「それはどういうことかしら、説明して頂戴、一刀」
「そうね、教えていただけますか、ご主人様?
「節操なしだとは思ったけど、そこまでとはね…」

三人は己の武器を構えて一刀に詰め寄った



「ちょ、ちょっとまって!!俺でも何がなんだか分からないんだよ!!」


一刀は身の危険を感じ必死に(実際そうなのだが)、自分が何故か三つの記憶を持っていること、ここが自分のいた世界であることなど知りうる限りを説明した





「…これはどういうことかしら?」
「むぅ…」
「…厄介な話ね」
予想外の返答に困惑する三人
そこに声がかかった


「それはねぇん、ご主人様がこの世界、ううん、貴女達の世界までも作った本人だからよん」
その声の主は、すっかり全回復したピンク褌の怪人だった


「いやああぁああ、なんなのあれ!!」
「な、化け物!!」
「きゃあぁあっ!!」
華琳はあまりの怖気に肩を抱いて奮え、愛紗は青龍刀を構え、蓮華は一刀の後ろに隠れた


「あらあら失礼な娘たちねん、せっかく説明してあげようと思ったのにぃ」
ぷんぷんと擬態語がでそうな仕草をする怪人
傍からみてそれは悪夢でしかなかった






「あ、あのさ君、良かったら教えてくれないか?」




勇気を振り絞って一刀はたずねることにした

「あら、ご主人様の頼みとあっては断れないわねん。

そうね、そもそもご主人様はこの世界にいた、それは間違いないわ。
でもね、一度貴女たちの世界に飛ばされていたのよ」

「それはどういうこと?」

「今の貴女達に会う前に、別の三国志の世界に飛ばされていたという意味よん。
その後、ご主人様は蜀の主、劉備の代わりとして大陸を制圧したわ」

そして私と結ばれたのよぅ、とたわごとを言っていたが四人は無視した
ありえない可能性だったからだ


「それで?」
イラつき混じりに先を促す

「なによん、冗談じゃない、そう怒らないでよ。

そうね、大陸を制圧したご主人様ははりきりすぎたのよ。
本来ならばありえないことを起こしすぎたのよん。
それで世界からの修正を受けた、ってわけ」

「修正?」

「そう、世界は無限に増えることができる。 でも無限に増えると困ったことがおきちゃう可能性があるの。
そこでその大元の歴史、正史とはかけ離れた外史を消してしまおうと考える世界の管理人がいるのよん。

彼らはご主人様の命を狙ったわ、もちろん貴女達が奮闘してそれは阻止されたわ。
でも彼らは最後の手段として、ご主人様を元の世界かそれに近い世界に飛ばしてしまおうとしたのよ。
歴史のゆがみの現況が消えればこれ以上ゆがむことはなくなり、世界の調和が保たれる、というわけよん」




「そんなありもしない可能性でご主人様を!?」
自分の記憶にはないことだが、想像するだけで腹立たしいといった風に愛紗は吐き捨てた

「でもそこでもご主人様の意志の力が働いてしまって、今度は貴女たちがまるごとこっちの世界にきちゃったのよ。
つまり、いくはずだった外史の代わりの世界をとっさに作っちゃったってわけね。
そんな芸当ができるなんて、これはもう一種の才能ともいえるわねぇ」

「あまりにも予想外だったから、彼らもそれにはまったく気づかずに皆で暮らしたわ、この家で。
でも、ご主人様は気の多い人じゃない、だからね……」

「……まさか」

三人は嫌な予感がしていた

「そう、皆にいい顔をしていたら修羅場になっちゃったのよん♪

結局、独占欲の強い華琳ちゃんと蓮華ちゃん、それと蜀の皆でご主人様の取り合いになっちゃってね」



そういった刹那、華琳と蓮華は同時に反応した
「「貴様に真名を許した覚えはない!!」」

二人は怪人に向かって自らの武器を突きつけた

「……そっか、皆わたしのことを覚えてないのよね、ごめんなさい」
どこか寂しそうに怪人はつぶやいた







「話の腰を折るようで悪いが、まず貴様は誰か教えてもらおうか」
緊迫した空気をなごませるためか、愛紗が尋ねた

「そうね、私は貂蝉。
傾城の美少女、貂蝉よん♪」



一瞬場の空気が凍った


「「傾城?」」
「び、美少女!?」
「な、貂蝉!?」


愛紗と蓮華は傾城という単語に、華琳は自らの持つ美少女の定義を否定され、一刀は貂蝉という名前に反応した
たしかに、或る意味傾城ではあるが
あんなにおぞましいものが闊歩する城なんて長くはないだろう

「……一刀、私はあれの存在を認めることができないのだけれども、殺してしまってもかまわないかしら?」
「ま、待ってくれ華琳。
そりゃあんなのに美少女って自称されたんじゃ怒るのも無理がないけど、あれは今のところ唯一の情報源なんだ」

「あれ、って扱いがひどいわねん。
ま、いいわ。
でも、貂蝉というのも世を忍ぶ仮の姿。本当は世界の管理者の一人なのよ♪」

「な!? ということは敵ではないか!!」

「いいえ、違うわ。
世界の管理人といっても、外史を世界の可能性と認める一派もあるの。
わたしはその一人よ」

「なんだか複雑すぎてよく分からなくなってきたわ」
蓮華が片手を額に当ててぼやいた




「つまり、俺が愛紗や華琳、蓮華のいる世界を作ってしまい、そこに迷い込んだ。
俺が邪魔だと思ったやつが俺を殺そうとしたけど駄目だったから俺を元の世界に飛ばそうとした。
でも俺がみんなとはなれるのが嫌で無理やり皆のいる世界を作ってしまった、という感じでいいのかな?」
一刀が話を元に戻すべく、

「ええ、大体そんな感じね。
続きを話してもいいかしら?」

4人は軽くうなずいて肯定を示した


「壮絶なるご主人様争奪戦の後、最後に残ったのは貴女たち三人だった。
死人が出なかったのが不思議なくらい激しい戦いだったわ

最後はご主人様に決めてもらおうと三人で詰め寄ったのよ。
でもご主人様はやっぱり独りに決めきれずに、問題を先延ばしにしたいと思ってしまった。
そして、その結果新たな外史が生まれてご主人様はそこに飛ばされたのよ。

もちろん、ご主人様は貴方達とはなれたくなかったから貴方達も連れて行くことになったの」

なぜか私は忘れてしまっていたようだけれども、と貂蝉はつぶやいた
まぁ、十中八九わざとであることは明確だが





「しかしそれでは私達にそのころの記憶がないのはおかしいのではないか?」
「そうね、関羽の言うとおりだわ。
私達は生まれてからこの世界に飛ばされるまで向こうの世界で生き抜いてきたという記憶と実感があるわ。
それをどう説明するのかしら?」
華琳が愛紗の言葉を受けて質問を投げかけた


「それはそうなるようにご主人様が外史を作ったとしかいいようがないわ。

いくら外史に逃げたとしても、皆をそのまま連れて行ってしまっては場所が変わるだけで問題は残る。
だからご主人様は最初からやり直すことにしたのよ。
貴方達の魂はそのままに、ご主人様がいなかったとした場合の生活を送っているという外史を。
もちろん、一方的にご主人様が知っていてはやり直すことにならないから、無自覚に自分の記憶もなくしてしまったようだけれども」

「別の生活を送ってしまったら魂が同じだとしても別人になってしまうのではないかしら?」

「いい質問ね、孫権ちゃん。 本来ならそうなるわ。
でも、ご主人様は貴女達をしっていた。
だから、結果として以前と同じ貴女達になるような生活をおくらせたといったほうが正確ね」



「はは、まるで神様だな、俺」
あきれた風に一刀はぼやいた

「ええ、そうね。
限度こそあるけれど、外史は作った人間の思った風にできるものですから。
普通の人間では外史は作れてもそこに飛び込むなんてことはできないわ。

でもご主人様は最初の跳躍のときに私達の跳躍のための道具に触れてしまったわ
そのため、跳躍する能力が身についてしまったというわけね」
びっくりびっくりというかのように貂蝉は肩をすくめた



「あとは貴方達も知っているようにそれぞれの世界でご主人様は生き、そしてまたこの世界に跳躍してきてしまったというわけよ」

「長い話だったが良く分かった」
「ええ、でも残念ながら一刀の浅はかな目論見は失敗に終わったようね」
「そうね、結局私達三人で貴方を争奪する結果になったものね」











「いえ、事態はもっと深刻になったわ、面白いことにね♪」
「え?」


それはどういうことか、一刀が聞こうとした刹那、日本家屋の障子が勢い良く開けられた



「じゃじゃ~ん!! 話はきかせてもらったのだ!! 鈴々も負けていられないのだ!!」
「一刀さん!! 心配したんですよ!!」
「ほぅ、主殿我らの存ぜぬ間に両手に花とはやりますなぁ」
「はわわ、ここがご主人様の世界なんですか」
「あわわ、天界とは不思議なところです」
「あらあら、抜け目がないわねぇ」
「あれぇ? お姉ちゃんひょっとして泣いてる?」
「ばっ、馬鹿そんなわけないだろ!! グスッ」
続々と蜀の皆が現れた!!


「こら、かず…北郷!! 探したぞ!!」
「フフ、まったく姉者は素直じゃないな」
「蓮華様~だんな様~ご無事ですか~?」
「あら隊長、おなごに囲まれてるなんて隅におけへんな~」
「華琳様!! 一刀様!! ご無事ですか!?」
「孕ませ無責任男、華琳様に変なことしてないでしょうね!!」
そしてそれに続く形で魏・呉の皆が現れた!!!

「お~っほっほっほ、私を置いていこうなんて無駄ですわよ~!!」
「アニキィ、おいていくなんてひどいじゃないかぁ~」
「蜂蜜水はどこじゃ?」
「にゃ~!!」



気がつけばすべての勢力の人間が集まってしまっていた









「うふふ、これまで以上に激しい争奪戦になりそうね、ご主人様♪」
「はは…あはははは……はぁ」
貂蝉がウィンクしながら言ったが、一刀は渇いた笑いしかできなかった


と、そのとき誰かが後ろから一刀に抱きついてきた
「うわぁっ!!」
「久しぶり、一刀♪」

慌てて振り返ると、そこには雪蓮がいた
そしてそのそばには冥琳がいた

「雪蓮!! 冥琳!!」
一刀は駆け寄ろうとしたが、それよりも先に二人に飛びついた人影があった

「お姉さま!! 冥琳!! 会いたかった……会いたかった!!」

「久しぶりね蓮華。
私がいなくなってからの貴女の活躍、聞いているわ」
雪蓮は自分に抱きつく妹の髪を優しくなでた



蓮華は幸せに浸っていたが、姉の一言に凍りついた
「……あらかじめ誤っておくわ
蓮華、一刀を返してもらうわね」
「な、それはどういうことですか!?」
「あのね、死ぬ間際に思ったのよ。
もったいないことしちゃったな、一刀やっぱりいいな~って。

でもあの時はどうしようもなかったから貴女にゆずっちゃったけど、今度は私の番よね?」
「え? え?」
「ほぅ、ということは雪蓮も私の恋敵になるわけね」
「あら、冥琳ということは貴女も?」
「え? え? え?」
突然の展開についていけない蓮華であった




「ま、ということだからまたよろしくね、一刀♪」
雪蓮はそういうと一刀の唇に軽くキスをした



「「「「「「「「「「あああぁああ~~~~~!!!!」」」」」」」」」」
そのとたん、ほかの娘達+αが非難の声を上げた




「一刀、貴方は私のものでしょう、何勝手なまねをしているの!!」
「北郷貴様、華琳様というものがありながら!!」
「主殿、私もさせていただきたいのだが?」
「あわわわわ」
「はわわわわ」
「ご、ご主人様に何をする!!」
「にゃ~~~、ミケもやるぅ~~~!!」
「姉様が、姉様が……」
「おいたわしや、蓮華様……」
「おやおや、このような数多の女子に愛されるとはお館様は英傑まれに見る方のようじゃの」
「ああぁああん、ご主人さっまぁあああん!! わ た し も ~~~!!」
「……先…越された」
「あぅ…ご主人様…」
「月が悲しんでる…!! あんのバカち●こはまたほかの娘に手を出して!!」
「だんな様は人気者ですね~」
「……一刀様」
「なんや、凪、うらやましそうな目ぇしとるなぁ」
「ほんとだねぇ~、お顔真っ赤だよ~!!」
「うぅ、お兄ちゃんは渡さないのだ!!」


もう騒動は治まる兆しも見えなくなり、騒ぎは大きくなっていった







皆に引っ張られたり叱られたり迫られたりしながら一刀は思った









(もう一回外史に逃げ込むってのはなし、だよねぇ……)



自業自得、である









かなり長くなってしまいました(汗)
二つに分けるかどうか迷いました。
前半部分が説明口調が多いです(汗)

とりあえず真・恋姫†学園の共通部分で考え付いたのはここまでです。
あとはこの舞台設定でのSSを考えたりしようかなと思っています。

今のところネタがひとつも思いつかないので、良いアイデア募集中~


  • 一刀が神になってしまった! まあ、面白いからいいけどさ。   アイデアか~。いっそのこと会社でも設立してみては?ww このメンバーなら何が来ても問題ないでしょうしねww -- 筆賊 (2009-03-14 20:41:53)
  • 続きを期待してます!!  -- F (2009-03-14 21:49:15)
  • 桃の字は居ないのか -- 名無しさん (2009-03-15 02:29:59)
  • 桃と粥はいるんじゃろか?台詞なかった気が・・・ -- 名無しさん (2009-03-15 15:59:25)
  • 遂にこっちの世界でのハーレム状態がw (檜山や師匠の登場に健気に期待してる俺が居る) -- 猫神 (2009-03-16 11:19:55)
  • 蜂蜜水では? -- 一刀 (2009-03-17 02:38:00)
  • この人達だけで学園が出来そう -- 一門 (2009-03-17 23:37:58)
  • これを待っていた!この三国ハーレムin正史を!! -- リバース (2009-03-29 22:00:20)
  • うーんうらやましい -- 食う清める (2009-03-30 20:23:34)
  • 普通の学園生活と日常が早く見たいYO -- ニヤケ人 (2009-05-21 15:53:46)
  • ニヤニヤ -- 名無しさん (2009-12-01 22:19:28)
  • 黄蓋はどういう扱い?死亡?生き残り? -- NYANKO (2010-01-09 16:10:50)
  • 真恋姫†無双~萌将伝~に続く形だな(笑) -- 恋は? (2010-05-28 01:03:32)
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最終更新:2010年05月28日 01:03