LASではない第参話

(更に一週間後)

「アスカ、行ってきた……」
「いいから、ここに座りなさい!早く!」

はい、ここはアスカの相談室。

「ちょ、ちょっと何でいきなり怒ってるのさ。とりあえず、お茶を煎れるよアスカ。ここにお煎餅が」
「煎餅なんていいから!何あれ?アンタ、本当にヤル気あんの?」
「……アスカ、何あれって、まさか。」
「そぉーよ!アンタ達がデートしてるとこ、わざわざ着いていって見させて貰ったわよ!」
「えーっ!?」

シンジは驚く。ていうか、呆れている。
当然だろう。人のデートを覗き見するなど、とても褒められた行為ではない。
しかしアスカ曰く、
「あのね、私も普通ならこんなことしないわ。
 でも、相談を受けて遊園地を勧めた以上は、責任ってものを感じて仕方がなかったのよ。」

物は言い様って程でもないが、怒る権利はこっちにあるとアスカは言いたげだ。




「……でもさ、アスカ。何ものっけからそんなに怒ることでもないじゃない。」
そう言いながらも、一応はアスカにお茶を煎れるシンジはなかなか辛抱強い。
しかし、アスカは差し出された煎餅をバリバリ囓りながら文句たらたら。

「まず、ファーストの格好。何あれ?学校の制服で遊園地つれ歩くなんてどういう神経してんのよ。」
「あ、あのねぇアスカ?それを僕に怒るわけ?」
「アンタ、責任感ってものがないの?まさか映画を見に行ったときも?」
「そ、そうだけど……いいじゃないか。そんなの綾波の自由だ。」
「自由も糞も無いわよ!まるで学校サボってるか遠足してるみたいでダサイったら無いわ。
 あんた、自分の連れに恥をかかせて平気なの?相談するならそういうこと言ったらどうなのよ。」
「そ……そんなこと言われても……」

流石のシンジも口をとがらせる。まあ、そこまで言われちゃ無理もないが。
しかし、アスカの勢いは止まらない。

「それともさ、あの子にゃ全くやる気ないんじゃない?女の子ならそれなりに努力するわよ、普通は。
 はっきり言ってアンタ相手にされてない。仕方なくアンタにお義理で付き合ってるだけ。判らない?」
「いや、あの……」
「で?遊園地に行って?小一時間ぐるぐる回って?最後に観覧車だけ乗って帰ってきました?
 それも、あの子じゃなくてアンタが乗ろうって言い出したんじゃないの?
 あーあ、こんなに尾行が楽に終わるとは思わなかったわ。」



「だ、だから、僕も自重してたんだってば。どの乗り物にも感心なさそうだったし、
 せっかくだから観覧車で景色を見ようよってことで……あの……」
「で?お話ぐらいは出来た?」
「……」
「はいはい、もうお仕舞い。悪いことはいわないから、あんな子やめたら?
 アンタ、クラスでもエヴァパイロットってことで良い顔なんだし、普通の子を選びなさいよ。」

これには流石のシンジも激怒する。
「い、いい加減にしてよアスカッ!普通って何が普通だって言うのさ!
 もういいよ!もうアスカに相談なんかしないからッ!!」

がらがらッ!ぴしゃんッ!

一人残ったアスカは、自分でお茶を入れ直しながら大きな溜息をつく。

「ったく。普通じゃないから普通じゃないって言ってるのよ。どーせ、こんなことになるんじゃないかと思った。
 エヴァに乗るためだけに育てられたあの子をデートに連れ歩くなんて、よっぽどの覚悟じゃ出来ないことだわ。
 判ってんのかしらね。あの馬鹿……」
最終更新:2007年12月02日 00:17
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